
スマートフォンの望遠カメラは、『光学(ペリスコープ/望遠専用)方式』『クロップ方式(インセンサーズーム)』に大分類されます。
ペリスコープはプリズムやミラーで光を曲げてセンサーに導く構造を採用。物理的な『光学望遠』を実現出来るのがメリットです。デメリットはコストが上がることや、カメラユニットが大型化してしまうこと。
『クロップ』は高解像度センサーを利用し、画面の一部を拡大する方法。本格的な望遠モジュールが不要となり、コストを抑えつつ本体を薄く設計出来るのがメリット。ただし厳密な『光学的な拡大』では無いので画像処理の影響を受けやすく、高倍率では写真では『絵』の様な仕上がりになることも。
クリップ方式の望遠性能は、単にレンズの焦点距離だけでなく『センサーサイズ』『画素数』『光学ズーム比』『手ぶれ補正』、そして『 ISP(Image Signal Processor)』『NPU(AI/ニューラルエンジン)』の処理能力、超解像アルゴリズムなど『後処理技術』の総合力が画質を左右します。
Xiaomi 15T Proは『5倍ズーム』に対応するライカ望遠カメラを搭載予定
先日日本リリースが発表された『Xiaomi 15Tシリーズ』に関しては、特設ページ内で『Xiaomi Tシリーズ初となるライカ5倍プロレベルの望遠カメラ』の搭載が明記。XiaomiのXグローバルアカウントも『5倍ズーム』を猛アピールし、さまざまな作例を投稿。



Xiaomi Global Xアカウントより
画像から分かるカメラのスペックは、望遠カメラのF値が『3.0』であること。Xiaomi 14T ProのF2.0から小口径化しています。恐らく物理的な『焦点距離』を伸ばすことが目的かと。
小型ながらインセンサーズームの画質向上を期待出来るISOCELL JN5
現行モデルのXiaomi 14T Proも望遠カメラを搭載。イメージセンサー名な明かされていませんが、ハードウェアの情報を確認出来るアプリ『Device Info HW』を参考にすると『s5kjn1』との記載。ベンダーは『Samsung』となっています。

s5kjn1は『ISOCELL JN1』のことで、Samsungが2021年下期に量産を開始したイメージセンサー。イメージセンサーサイズが『1/2.76インチ』で、ピクセルサイズ『0.64μm』、解像度『5,000万画素』。
5,000万は有効画素を示し、撮影後に出力される実行画素は『1,250万画素』。インセンサーズームを活用することで『実質5倍相当』は可能なはずですが、Xiaomi 14T Proに関しては『15mm~120mmの焦点距離をカバー』という表現にとどめています。

クロップ式のインセンサーズームは、通常大きめなイメージセンサーを採用(クロップ部分を大きくとれるので)。よって1/2.76インチのISOCELL JN1が、その用途に適しているとは正直言えません。
公式に『5倍ズーム』をスペックとして打ち出している『Xiaomi 15』も、望遠カメラのイメージセンサーは非公開。Patreonに掲載されている情報を参考にすると、Samsungの『ISOCELL JN5』が濃厚。
ISOCELL JN5のイメージセンサーサイズも『1/2.76インチ』。ISOCELL JN1と同じです。ただし『望遠』に焦点を当てると、ISOCELL JN5を採用するメリットが見えてきます。
オートフォーカス精度
- JN1 → Double Super PD:従来比で位相差検出ピクセルを増やして暗所でも合焦しやすくした方式。
- JN5 → Super QPD:縦横方向すべてで位相差を検出できるため、被写体が小さく写る望遠撮影でも より高精度で安定した AF が可能。
HDR・ダイナミックレンジ性能
- Smart-ISO+Inter-scene HDR。
- Dual Slope Gain(DSG) を追加し、1枚のフレームで異なるゲインを適用して合成可能。
ノイズ耐性・暗所画質
- 4つの画素を1つに統合し 1.28μm 相当として暗所対応。
- 画素統合に加え Dual VTG(Vertical Transfer Gate) を採用し、暗所ノイズをより低減。
ズーム用途での設計
- 小型モジュール化に優れ、汎用センサーとして幅広く採用されるが、特に望遠向けに最適化されたわけではない。
- インセンサー2倍ズーム対応(リモザイクベース) を備え、望遠やハイブリッドズーム用途を想定して設計。
高倍率の解像を引き上げる後処理技術
次に『画像処理』の部分。Socは順当な流れであればDimensity 9300+から『Dimensity 9400+ 』へのアップデート。MediaTekからはすでにDimensity 9400+が登場しています(Redmi K Padが採用)。

9400シリーズではプロセスサイズが4nmから『3nm』へと微細化。画像処理を行うISPには『Imagiq 1090 ISP』を採用。
Imagiq 1090最大の特徴は『Full-Range HDR Zoom』。広角から望遠までズーム全域でHDR撮影が可能となり、明暗差の大きい場面でもディテールを保持。
また『Smooth Zoom』によりズーム中のピント合わせやがスムーズになり、動きのある撮影でも安定した画質を実現します。
動画撮影性能も進化し、4K60fpsを最大3時間連続で記録できる耐熱・省電力設計を採用。さらにAI処理との連携で被写体と背景をリアルタイムに分離し、自然なボケや強調効果を可能にしました。
加えて『Gen-AI Super Zoom』により高倍率ズーム時のノイズ低減やディテール補完も強化。音声面ではAIノイズリダクションや複数マイク対応で、24ビット高音質録音が可能になっています。
NPU(AI処理)に関しては、NPU790から『NPU890』へと刷新。Speculative Decoding+ 対応で大規模言語モデル(LLM)の推論を高速化。Transformer / Diffusion 系モデルの実行を最適化することで、画像生成やスタイル変換の低遅延化を実現。GenAI 処理時のバッテリー消費も抑制しています。
APU890では大規模AIモデルをモバイル上で効率よく動かせるよう最適化されており、望遠撮影時に必要な『ESRGAN系の超解像』『物体・顔認識』『スタイル変換』などをより高速・省電力で実行可能に。
以前『レンズ』『イメージセンサー』が同じPOCO M7 Pro 5GとPOCO X7 Proのカメラを高倍率で撮り比べてみたのですが、その差は歴然。『後処理技術』の重要性を再認識させられました。




最上位モデルのペリスコープはすでに『次の次元』へ
控えめなアップデートであれば、イメージセンサーと画像処理技術を『望遠』に最適化して、Xiaomi 15のように『5倍ズーム』を打ち出すはず。その場合は『F2.0』が維持されてしかり。
注目ポイントは、Xiaomi 15T ProのF値が『3.0』であること。レンズの仕様は確実に変わっています。そしてこの3.0というF値は、最上位モデルへの採用比率が高い『ペリスコープ方式』の可能性を示唆。
もっとも、Xiaomiの最上位モデル『Xiaomi 15 Ultra』が採用するペリスコープカメラは、『1/1.4インチ』というメインカメラ並みの大型イメージセンサーを採用。『望遠カメラ離れ』した画質に進化を遂げています。仮にXiaomi 15T Proがペリスコープカメラを採用しても、すでに十分な差別化が出来ているということ。



Xiaomi 15T Proは『5倍以上』も期待出来そう
ちなみに、界隈ではiPhone 17 Proの『最大8倍の光学ズーム』という表記につき、説明が不適切であると波紋を呼んでいます。

Xiaomi Japan プロダクトプランニング本部 本部長を務める安達は、恐らくこの件を踏まえて『来週に向けての学び 光学5倍以上には 相当 をつけてプレゼンする』と自身のXにポスト。Xiaomi 15T Proとの確定付けはしていませんが、『光学5倍』への期待値が高まる内容です。
あくまで予想ベースの情報にはなりますが、Xiaomi 15T Proの『5倍望遠カメラ』に関してまとめると下記の通り。
- F3.0のレンズ(ペリスコープ)を採用して物理的な焦点距離(望遠倍率)を5倍(115mm相当)まで伸ばす
- イメージセンサーをISOCELL JN5に刷新して『AF』『HDR』『ノイズ耐性』を高める。
- Imagiq 1090 ISPの採用でHDRおよびオートフォーカスの精度が向上。高倍率ズーム時のノイズ低減やディテール補完も強化。
- NPU890による『ESRGAN系の超解像』『物体・顔認識』『スタイル変換』高速・省電力化により5倍を超えた高倍率時の画質も向上。
Xiaomi 15T Proで『光学5倍』撮影を出来るようになったら嬉しすぎる。公式発表が待ちきれません!

Xiaomi 14T Pro


