Nothing Phone (3a) が『Qualcomm』である理由。AnTuTuからは見えないユーザー目線の進化

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この記事に書いてある内容

ベンチマークに大差なし!?Phone (3a)は本当にアップデートしているのか

  1. 独自性にユーザーの意見をプラスして完成するNothing製品
  2. Phone (2a)とPhone (3a)でAnTuTu Benchmarkを実測した結果
  3. AITUTU Benchmarkのスコアから垣間見えるSnapdragon 7s Gen 3の本性
  4. 光学+AIのチカラで実現した超解像。ウルトラズームの実力をPhone (2a)の望遠画質と比較
  5. Phone (3a)の望遠カメラで『5倍』ズーム
  6. Qualcomm化の恩恵は『オーディオ』にも。Phone (3a) は『高音質』『低遅延』Bluetoothコーデック『aptX Adaptive』をサポート
  7. 関連リンク

ベンチマークに大差なし!?Phone (3a)は本当にアップデートしているのか

独自性にユーザーの意見をプラスして完成するNothing製品

2025年4月15日、イギリスに拠点を置くテクノロジーメーカー『Nothing(ナッシング)』は、各チャネルにおいて『Phone (3a) 』の発売を開始しました。

Phone (3a) は同メーカーのスマートフォンとして、初めて通信キャリア(楽天モバイル)が採用。Nothingが日本市場に参入したのは2022年8月。短い期間ながら着々と浸透を深めています。

プロダクトの先進的な見た目から、『独自性が強いメーカー』というイメージを持っている人が多いかもしれません。そういったオリジナルの要素に『ユーザーの意見』を組み合わせて製品開発を行っているのが、私の中での『Nothing』です。

スマートフォンメーカーが行っている代表的なアップデートと言えば、まずCPUとGPUの『処理能力』向上。『AnTuTu Benchmark』『Geekbench6』『3DMark』などのスコアを上げることで、高性能化をアピールするしやすいからです。

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ただしそれが『体感』に大きな差を与えるレベルなのか。廉価モデルの性能が底上げされた昨今においては、『微妙』なケースが増えているはず。Nothingは『Phone(2a)』の時点でかなり快適。恐らくユーザーから『動作速度』に関する不満はほぼ出なかったのではないかと予想。

Phone (2a)とPhone (3a)でAnTuTu Benchmarkを実測した結果

Phone (3a) では、SocのメーカーをPhone (2a) のMediaTekから『Qualcomm』へと変更。AnTuTu Benchmarkのスコアはトータルスコアで4〜5万程度上昇と、アップデートにしては軽微な内容。

処理能力1

Phone 2a(Mediatek 7200 Pro) のAnTuTu Benchmark(V10.5.1)スコア実測結果(左からRAM拡張4GB、RAM拡張OFF)

処理能力2

Phone 3a(Snapdragon 7s Gen 3) のAnTuTu Benchmark(V10.5.1)スコア実測結果(左からRAM拡張4GB、RAM拡張OFF)

しかし細かく見ていくと、CPUとGPUのスコアを高めつつ『温度上昇』『電池の減り』をPhone (2a) よりも抑えている。これはスマートフォンの実用的なアップデートとなる『電力効率の向上』を意味します。

UXスコアが低めに出ているのは『ビデオ編集』の部分が影響。今後アップデートでスコアが上がる可能性はありますし、Phone (3a) で『ビデオ編集をする』人の割合はかなり少ないかと。

AnTuTu Benchmarkスコアのみを基準にすると、実売価格が下がっている『Phone (2a) で良いかも』と考える人の方が多いかもしれません。しかし本当の進化は別のところに。

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AITUTU Benchmarkのスコアから垣間見えるSnapdragon 7s Gen 3の本性

NothingはPhone (3a) が搭載するSoc『Snapdragon 7s Gen 3』につき、『AIエンジンをもつ』と説明しています。では、Phone (2a) とPhone (3a) ではどの程度『AI性能』に差があるのか。『AITUTU Benchmark』で実際にテストしてみました。

AI性能1

Phone 2a(Mediatek 7200 Pro) のAITUTU Benchmark(V3.5.6)スコア実測結果

AI性能2

Phone 3a(Snapdragon 7s Gen 3) のAITUTU Benchmark(V3.5.6)スコア実測結果

最初Phone (3a) のスコアを『3万台』と勘違い。まさかの性能ダウンかと思いきや、よくよく見ると『30万台』でした。数値だけで判断すると『約4倍』程度にAIスコアが上がっています。

Super Resolusion(超解像度)』は1,336から『44,015』、『Style Transfer(画像変換)』も10,630から『203,639』に大幅アップ。

光学+AIのチカラで実現した超解像。ウルトラズームの実力をPhone (2a)の望遠画質と比較

Phone (3a) が持つAI性能を分かりやすく体感出来るのが『カメラ』です。同端末はPhone (2a) には非搭載の『望遠カメラ(光学2倍ズーム)』を搭載。

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2倍程度の物理的なズームアップ機能は、ミドルクラスのスマートフォンでもそれほど珍しくありません。Phone(3a)は光学とデジタルを組み合わせた『ウルトラズーム(最大30倍)』を採用。

画像処理用に独自開発した『TrueLensエンジン 3』は、『高度な演算アルゴリズム』『AI処理』『マルチフレーム技術』を統合。

つまりPhone (3a) の望遠カメラは、光学ズームで『物理的』に被写体を拡大しつつ、さらにAIを駆使して画像を鮮明化。『10倍』という一般的なミドルクラスのスマートフォンではかなり厳しい拡大率で、Phone (2a) と画質を比較。

画像1

Phone (2a) のメインカメラで撮影(倍率10倍)

画像2

Phone (3a) の望遠カメラで撮影(倍率10倍)

Phone (2a) はメインカメラ、Phone (3a) は望遠カメラで撮影。デフォルト設定だとやや暗めな仕上がりになりますが、解像の精細さは雲泥の差。低倍率で撮影した画像と比較することで、『10倍の凄さ』がより伝わるはず。

画像3

Phone (3a) の望遠カメラで撮影(倍率2.9倍)

こちらは『2.9倍』で撮影。被写体に近づいているので背景がボケています。『2.9倍』から3倍以上デジタルズームしてあのクオリティを維持。恐るべし『AI』のちから。

『10倍』の画質比較を異なる被写体で。Phone (2a) はディテールが歪んでしまっているのに対し、Phone (3a) は質感を得られる程度。繰り返しになりますが、これは『10倍』に被写体を拡大して撮影した画像です。

画像4

Phone (2a) のメインカメラで撮影(倍率10倍)

画像5

Phone (3a) の望遠カメラで撮影(倍率10倍)

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Phone (3a)の望遠カメラで『5倍』ズーム

倍率『5倍』で撮影した屋外の画像がこちら。近づくのが怖い『花にとまっているハチ』なんかも、離れた位置からそれなりに。

花にとまったハチヤマボウシムラサキのあじさいエンレイソウピンクのあじさいハマナスアガバンサスミニバラ

AIの技術を導入することで、Phone (3a) の望遠カメラ画質が向上していることは疑いの余地なし。ただし被写体によっては粗く描写されたり、『万能』とは言い切れません(物理的なズームにはもちろん敵わない)。

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もっとも、Phone (3a) にとって望遠カメラは『オマケ』的な存在。メインはあくまで画素の最大電荷量(蓄積可能な電子の数)を『約2倍』に拡大した『広角カメラ』です。

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Qualcomm化の恩恵は『オーディオ』にも。Phone (3a) は『高音質』『低遅延』Bluetoothコーデック『aptX Adaptive』をサポート

Bluetooth設定

Phone (3a)の設定画面

SocメーカーをMediaTekから『Qualcomm(Snapdragon 7s Gen 3)』に変更したことで、Bluetoothコーデック『aptX Adaptive』を利用可能になったのも大きなポイント。

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通勤や通学で混雑した電車に乗っていて、『イヤフォンから流れる音がブツブツ途切れる』という経験を多くの人がしているはず。これはBluetoothの『電波干渉』が原因になっている可能性が高いです。

aptX Adaptiveは環境に合わせて『ビットレート(データ量)』を自動的に調整。電波干渉が大きいときは、転送するデータ量を減らして『音の途切れ』を制御します。

コーデック名aptXaptX AdaptiveLDAC
開発元QualcommQualcommSony
最大ビットレート352/384 kbps (固定)279~420 kbps (可変)330/660/990 kbps (選択)
最大サンプリング周波数48 kHz96 kHz96 kHz
最大ビット深度16 bit24 bit24 bit
遅延 (目安)約 100~150 ms約 50~80 ms (低遅延モード時)約 100~250 ms (ビットレート依存)
適応性なしあり (環境に合わせて可変)モード選択 (手動/自動)
特徴標準的な高音質音質、遅延、安定性のバランス高ビットレートでの高音質志向

電波が干渉しなくなると自動的にビットレートを上げてくれるので、調整の手間をかけずに『高音質』『低遅延』な環境が維持。一度『aptX Adaptive』に慣れてしまうと、なかなか他のコーデックで接続したいと思わないかもしれません。

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スマートフォンの基本的な使い方である『音楽を聴く』『動画を観る』。CPUやGPUの処理能力を『体感で分からない程度』高めるよりも、『aptX Adaptiveを使える』ことの方がユーザーにとってメリット。いかにもNothingらしいアップデートといえるでしょう。

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瀬名 勇斗
運営者
サラリーマン時代は『製品開発(モバイルガジェット関連)』『広告(パッケージ及び説明書など)デザイン』『ディレクション』『マーケティング』『コピーライティング』などに従事。一つの製品に深く関わる事が好きで、開発から行っているメーカーに勤務していました。

ガジェット好きが高じて、一時は日本で発売されていないスマートフォンを海外から輸入。『Xiaomi』『OPPO』に関しては、日本参入前からフリークに。

元々写真を撮るのが趣味で、スマートフォンで撮影した作例を記事内に多数掲載。端末の性能を知りつつ、楽しんでいただければ幸いです。
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